マイケル・ムーアのSiCKO（シッコ）、視聴

2008.12.1映画

アメリカ医療制度の問題をドキュメンタリー調に綴るブラックコメディ「SiCKO」を見たよ。監督は「ボウリング・フォー・コロンバイン」や「華氏911」で有名なマイケル・ムーアさんです。

ご存じの方もいるかと思いますが、アメリカ合衆国には日本のような国民健康保険制度がありません。そのため民間の医療保険を利用することになるのですが、貧困のために保険に加入できない人たちが5,000万人もいるそうです。また保険加入後も、ささいな疾患の申告漏れなどで保険金の支払いを拒否される人もいるようです。

以下、ネタバレを含む映画紹介になりますので興味がない方はご退場下さい。

まずアメリカ医療保険制度の問題点を示す実例として、仕事中の不注意で指を2本切断したが「カネがない」ので1本だけ繋げた人や、交通事故で意識不明になって運ばれたのに「事前の申請がなかった」として保険会社に支払い拒否にあったりした人の体験談などが紹介されます。日本人からすると「ホントにこんなに酷いの？」と衝撃を受けるような内容ばかりです。

そんなアメリカ医療保険制度の問題点を挙げていくと共に、対比するべき材料としてカナダやイギリス、フランスの医療現場を紹介しています。これらの国では医療費がゼロな上、病気療養期間として100％支払いの有休が数ヶ月も貰えたり、産後に無料で乳母さんが派遣されてきたり、おまけに大学まで無料だったりします。

極めつけは9.11のヒーロー達を「アメリカの宿敵」であるキューバに連れて行き、キューバで治療を受けさせるくだりでしょう。アメリカ国内では費用面で無理があり適切な治療が受けられないのに、仮想敵国キューバではこれでもかと言うぐらい親切丁寧な治療を受けることになります。特に印象的だったのは、とある女性の服用薬が5セントで売られているシーン。その女性は治療費の支払いのため自宅まで売る羽目になったらしいのですが、アメリカで120ドルもする薬がキューバではたった5セントで買える事実に思わず涙がこぼれていました。

この映画を見ちゃうと「アメリカ（笑）」になっちゃいそうだけど、実際はアメリカ医療にも良いところがあり、カナダ・イギリス・フランス医療にも悪いところがあることも知っておくべきでしょう。よく言う話ですが「早い・安い・うまい」の3条件では、どれか2つしか取ることが出来ません。アメリカは「安い・うまい」を選択し、カナダ・イギリス・フランスは「早い・うまい」を選択しました。そして我が国日本は「早い・安い」を取っていると思います。

日本では「アメリカにならえ」な風潮が強いですが、医療制度に限ってはアメリカは反面教師にしかなりえません。また安易にフランスなどを見習うと無闇に税金が膨れあがるだけだと思います。他国の良いところだけ取り入れて、世界に自慢できるような医療制度を日本が持てるようにしたいですね。

そんな感じで色々と考えさせてくれる良作です。「うわぁ」な話題ばかりですが、未来に希望を持てるような構成にしてあるのは監督のうまさでしょう。万人にお勧めできる良い映画ですよ。

参考リンク：映画『シッコ SiCKO』公式サイト

参考リンク：シッコ – Wikipedia